競馬の世界も春は出会いと別れの季節。2月28日をもって今年は東西で7人の調教師が定年による引退を迎えたが、その一方、3月1日に東西で5人の調教師が新規開業。その中には、騎手として通算JRA通算2541勝(歴代4位)、GⅠ26勝という輝かしい成績を残した
蛯名正義調教師の名も。騎手としての実績も素晴らしいが、引退したレジェンド・藤沢和雄元調教師に師事し、技術調教師だった1年を含め調教師を志して約4年は師の元で学んだ、いわば藤沢和雄調教師の最後の弟子ともいえる存在でもある。そういう意味で周りからの注目度もとりわけ大きい。
馬房は16でスタートするが、厩舎スタッフ10人のうち9人は元藤沢和雄厩舎。残る一人も騎手時代のお手馬
ホエールキャプチャを担当していた田中清隆厩舎の元スタッフで、まさに気心が知れたメンバー。そして、管理馬32頭もすべて藤沢和雄厩舎からの引継ぎ馬。すでにベースラインはしっかりできているだけに、あとは調教師のアレンジひとつで初年度からブレークする可能性も。担当トラックマンとしてもどんな活躍を見せてくれるかが楽しみで仕方ない。
開業1週目の先週は出走馬がなかったが、今週は阪神と中京で2頭がスタンバイしている。
蛯名正義厩舎の初出走になりそうなのが土曜中京7R(4歳1勝クラス、ダート1400m)を予定している
レッドアヴニール(牡4歳)。デビューが遅れ中央では1戦したのみで、地方競馬に移籍。門別、水沢のダートで2勝して中央に再転入してきた馬だが、前走は初戦以来の芝にもかかわらず、内枠からトップスタートを決め残り300mあたりまではしぶとく粘り中央の1勝クラスでもスピード負けしないところは見せた。距離短縮は魅力だし、地方で走り慣れたダートに戻れば前走以上の粘りも期待できるのでは。
そして、もう1頭は土曜阪神10R・飛鳥S(4歳以上3勝クラス、芝1800m)の
レッドアルマーダ(セン馬6歳)。前走は1年以上のブランク明けで、まだ態勢が整っていない部分もあったなかでのコンマ3秒差の3着。直線は前が壁になって追い出しが遅れた部分もあっただけに、地力の高さは十分見せたといえる。「とくに反動もなかったし、むしろ上積みの方が大きいはず」と
蛯名正義調教師。阪神外回りへの適性は前走で十分示したし、1800mは3勝中2勝をあげている得意の距離。ハンデも手頃な55キロ。開業初勝利のチャンスも。(関東競馬エイト・松本ヒロシ)