レース最多のGI馬8頭が出走した
宝塚記念が28日、阪神競馬場で18頭によって争われ、北村友騎乗で2番人気の
クロノジェネシスがレース史上最大の6馬身差をつける圧勝で、昨年の
秋華賞以来となるGI2勝目を挙げた。6番人気の
キセキが2年連続の2着。12番人気の
モズベッロが3着に入り、3連単は18万円超の高配当となった。1番人気
サートゥルナーリアは4着だった。
◇
涼しげな顔で後続を突き放した。ハイセイコーや
ビワハヤヒデを上回り、
宝塚記念史上最大となる6馬身差の圧勝。同レース最多のGI馬8頭がそろった一戦で、
クロノジェネシスが並みいる強豪を蹴散らし、衝撃的なGI2勝目を飾った。
「本当に強かったです。リズム良く運べて終始手応えは良く、直線は絶対に伸びてくれると思った。期待に応えてくれましたね。クロノを褒めてあげてほしい。背中に乗れて幸せです」
デビューから手綱を取り続ける北村友騎手は満面の笑み。ウイニングランでは、無観客のスタンドに向かって右手の人差し指を突き上げた。
好スタートを決め、道中は中団の外めを追走。折り合いもぴったりだった。3コーナー過ぎから抜群の手応えで先頭を射程に入れ、直線の入り口で先頭に立つと、あとはワンマンショー。左ムチに反応し、メンバー最速の上がり3ハロン36秒3の末脚で一気に突き抜けた。
検量室前で2着
キセキから下りた
武豊騎手が、出迎えた角居調教師に「バケモノがいた」と脱帽するほどの強さ。「いつも一生懸命で、とにかく走る能力がある。正直、これだけのパフォーマンスを見せてくれるとは思っていなかった」と斉藤崇調教師も驚きを隠せない激走だった。
昨年の
リスグラシューに続く、牝馬では史上5頭目の
宝塚記念V。最大の勝因は、成長力だ。前走から10キロ増の464キロと、馬体重はデビュー11戦目で最重量。「成長が表れていますね」とトレーナーが言えば、主戦騎手も「パワーをつけてくれたのが一番のポイント。今までで一番落ち着いていて、いい雰囲気でした」と目を細めた。
直前に降った雨も味方した。朝一番に「稍重」でスタートした芝は、7Rから「良」まで回復したが、その後の豪雨でレース前には再び「稍重」に。昨年の
秋華賞を稍重で制し、2走前の
京都記念では雨の重馬場でVと、タフな馬場を物ともしない牝馬が存分に底力を見せつけた。
豪GI
コックスプレートと米GIブリーダーズカップターフの優先出走権を獲得(別項参照)したが、海外遠征を含めて今後は未定。近日中にノーザンファームしがらきに放牧に出され、今後に備える。
「秋はどこに行くか分かりませんが、どこにいってもいいパフォーマンスをしてくれる馬。いい活躍をしてくれると思う」と斉藤崇調教師の期待は大きい。強さが本物であることを証明する、圧巻のグランプリ制覇。男勝りの4歳牝馬が、さらなる飛躍を遂げていく。(渡部陽之助)
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クロノジェネシス 父バゴ、母クロノロジスト、母の父
クロフネ。芦毛の牝4歳。栗東・
斉藤崇史厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は(有)サンデーレーシング。戦績11戦6勝。獲得賞金5億3165万8000円。重賞は2019年GIII
クイーンC、GI
秋華賞、20年GII
京都記念に次いで4勝目。
宝塚記念は
斉藤崇史調教師、
北村友一騎手ともに初勝利。馬名は「母名より+創世記」。
★優先出走権付与…優勝した
クロノジェネシスには、10月24日に豪ムーニーバレー競馬場で実施されるGI
コックスプレート(芝2040メートル)及び、11月7日に米
キーンランド競馬場で実施されるGI
ブリーダーズCターフ(芝2400メートル)の優先出走権が付与された。昨年の
宝塚記念優勝馬
リスグラシューは
コックスプレートでも優勝し、1着賞金300万豪ドル(約2億2000万円)に加えて200万豪ドル(約1億4800万円)のボーナスも獲得している。
★GI馬8頭の出走…1984年のグレード制導入以降では、89年と2007年の7頭を抜いて同レース史上最多。
★
北村友一騎手…3回目の挑戦で初V。これまでは昨年の4着(
アルアイン)が最高。JRA・GIは昨年の
阪神JF(
レシステンシア)以来の4勝目。
★
斉藤崇史調教師…初出走で初勝利。JRA・GIは
NHKマイルC(
ラウダシオン)に続く今年2勝目で通算3勝目。
★バゴ産駒…初出走で初勝利。JRA・GIは同馬が制した昨年の
秋華賞以来、通算3勝目。
★フルゲート…07年以来、史上2回目(10年は1頭出走取り消しのため17頭立て)。
★払戻金…ワイド(12)(14)の1万2070円は、従来の記録(1万1080円)を抜いて、同レースにおけるワイドの最高払戻金額。
★売り上げ…
宝塚記念の売り上げは203億9865万9400円で、前年比104・8%。今年上半期の平地GIは全12レースを終了し、前年比増は
高松宮記念、
ヴィクトリアマイルに次いで3レース目となった。また、中央競馬の上半期(前年=開催140日、今年=開催148日)の売り上げは1兆4752億6872万8200円(前年比101・5%)、入場者は86万3609人(前年比26・8%)と発表。新型コロナウイルス禍で3月以降は無観客開催となったため入場者数は大幅減だったが、インターネット、電話のみの馬券発売ながら売り上げは健闘した。
★28日阪神11R「
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