シムーン
第59回産経賞オールカマー(22日、中山11R、GII、3歳上オープン国際(指)、別定、芝・外2200メートル、1着本賞金6000万円=出走16頭)伏兵がV。田辺裕信騎乗の9番人気ヴェルデグリーンが、後方追走から3~4コーナーで前との差を一気に詰め、直線で外から豪快に差し切った。重賞初制覇で、素質がついに開花。GIタイトル獲得に夢がふくらんだ。タイム2分12秒0(良)。2番人気メイショウナルトがクビ差の2着に入り、さらにクビ差の3着は1番人気ダノンバラードだった。 相沢郁厩舎の看板馬だった1999年のオークス馬ウメノファイバーの孫、ヴェルデグリーンが、戦前の低評価を覆して大仕事をやってのけた。相沢調教師は快勝劇に胸を張る。 「サマー2000シリーズも考えましたが、もともと蹄の弱い馬。思い切って削蹄して、夏場を休養に充てたのが正解でした。まともなら、このぐらいはやれる馬ですから」 2歳時の2010年暮れ、中山芝2000メートルでデビュー勝ち。素質にほれ込んだ相沢師は「ファイバーの血統から、ようやく重賞を勝てそうな馬が出てきました」と、クラシックに夢をはせた。だが、ヴェルデグリーンはもともと繊細な気性。翌年の3月11日に起きた東日本大震災の大きな揺れに恐怖心を抱いて調子を崩し、同時に前脚のスナップが強い独特なフォームから慢性的な蹄の不安も抱えてしまった。 陣営はその後、焦らずじっくり育てる方向に転換。「まだ精神的にデリケートな面は残りますが、しっかりと追い切りができるようになったのは大きい。田辺(裕信)騎手も手の内に入れてくれています」と相沢師。 その田辺騎手とは、コンビを組んでこれで5戦4勝。抜群の相性だ。「道中は馬のリズムを守り、3~4コーナーでかわせるかなと。前走の新潟大賞典(10着)は蹄の不安もありましたし、(この馬に対する)思い入れがあったので、(今回はガッツポーズが)出ました」と、日頃はクールな田辺騎手が語った。 今後は蹄の状態を見ながら、天皇賞・秋(10月27日、東京、GI、芝2000メートル)を視野に調整。大震災のショックからの“復興”を果たした素質馬が、古馬の頂点を見据える。 (芳賀英敏)★産経賞オールカマーの着順・払戻金はこちら■ヴェルデグリーン 父ジャングルポケット、母レディーダービー、母の父スペシャルウィーク。栗毛の牡5歳。美浦・相沢郁厩舎所属。北海道新冠町・斉藤安行氏の生産馬で、馬主は斎藤光政氏。戦績18戦6勝。獲得賞金は1億2460万8000円。重賞初勝利。産経賞オールカマーは相沢郁調教師、田辺裕信騎手ともに初勝利。