第6回
ヴィクトリアマイル(15日、東京11R、GI、4歳上牝馬オープン国際、定量、芝1600メートル、1着賞金9000万円=出走17頭)2頭の女王の初対決は、昨年の牝馬3冠
アパパネ(美浦・
国枝栄厩舎、牝4)が、昨年のJRA年度代表馬
ブエナビスタの追撃をクビ差封じてV。牝馬史上最速となるGI5勝目を飾った。タイム1分31秒9(良)はレースレコード。12戦全てでコンビを組んできた
蛯名正義騎手(42)=美浦・フリー=は「
アパパネの方が強いと信じていた」という期待どおりの結果に感無量の表情だった。
アパパネは次走の
安田記念(6月5日、東京、GI、芝1600メートル)で、牝馬最速のGI6勝目に挑む。
東京競馬場に集った6万人近い大観衆が息を呑んだ2強の攻防は、先に抜け出した
アパパネが、追い込む
ブエナビスタをクビ差振り切って決着。女王初対決の一戦を制した
アパパネは、ブエナが保持していた記録を塗り替え、牝馬史上最速のGI5勝目に到達した。
「相手は普通の牝馬じゃない。年度代表馬だからね。最後は絶対に(後ろから)くると思っていたし、やっぱり来たなと思った。それでも最後まで頑張ってくれて、本当にカワイイ子です」
現役最強牝馬をくだして、新女王を襲名。
蛯名正義騎手はウイニングランで右手の人さし指を高く突き上げて「ナンバー1」をアピールした。
相手が強くても、蛯名は
アパパネのスタイルを貫いた。好スタートから折り合いをつけて、道中は中団をキープ。すぐ後ろにブエナがいることを承知のうえで、直線入り口では外に出して早めにスパートした。「(ブエナに)ついてこいという気持ちだった。
アパパネの方が強いと信じて、自信を持って乗るだけだった」。これまでの競馬のように、早めに動いてもぎ取ったV。新女王にふさわしい内容だった。
今回、蛯名には打倒ブエナ以外にも抱いていた思いがあった。「
アパパネは福島でデビューした馬だから」。09年7月5日福島競馬場での新馬戦3着が、サクセスストーリーの出発地だったからだ。2歳夏の福島デビューでクラシックを制したのは、89年のダービーを勝った
ウィナーズサークル以来、実に21年ぶりだった
アパパネ。「大舞台で福島デビューの馬が勝ったことが、少しでも東北の人たちに伝わってくれれば…」。トレセンがある茨城県美浦村に避難中の被災者を招いたお花見会で、率先して子供たちを励ましていた蛯名。被災地に勇気を与える走りを-。それが強気のレースぶりに表れていた。
これがGI10勝目となった
国枝栄調教師(56)=美浦=は「年度代表馬相手で正直、善戦できればいいかなと思っていた。本当にすごい馬」と愛馬の強さに脱帽。前哨戦の
マイラーズCは4着に敗れていたが、GIではキッチリ結果を出すのが
アパパネの真骨頂。
安田記念での牝馬最速GI6勝の記録更新にも大きな期待がかかる。
「本当に最高の馬。自分にとっても大きな勝利です」。大仕事を成し遂げた蛯名は、
オークスで
スピードリッパー、ダービーでは
トーセンラーに騎乗予定。名勝負を制した関東の第一人者が、春のGIを盛り上げる。(越智健一)