第68回
安田記念(3日、東京11R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝1600メートル、1着本賞金1億1000万円 =出走16頭)連闘で挑んだクリストフ・ルメール騎乗の9番人気
モズアスコットが、直線で脚を伸ばしてGI初制覇。タイム1分31秒3(良)はコースレコードタイ。連闘馬がGIを勝ったのは1998年の阪神3歳牝馬Sの
スティンガー以来20年ぶり3度目となった。2着は
アエロリットで1番人気の
スワーヴリチャードは伸び切れず3着に敗れた。
底知れぬ根性を発揮した。中6日の連闘で臨んだ
モズアスコットが、ゴール前の叩き合いを制してGIで重賞初制覇。引き揚げてきたルメール騎手は、馬上から握手した矢作調教師に「おめでとうございます」。信頼の仕上げに笑顔を見せた。
「ごっつぁんです!(連闘で)心配したが、返し馬で安心。状態は良かったので、いっぱい勝つ自信があった。追い出すと反応も良く、最後まで頑張ってくれた」
好スタートも他馬と接触して中団に後退した。鞍上は冷静に「バランスを崩したくないと思って隙間ができるのを待った」。直線は前が壁になりながら追い出し、残り200メートルで進路があくと右ムチでエンジン点火。鋭く伸びて、
アエロリットをクビ差かわし、1分31秒3のコースレコードタイで駆け抜けた。
「惜しい競馬で悔しい思いばかり。このレースを取りたいという思いは世界一強かった。本当にうれしい」
矢作厩舎は
安田記念で2着が3度。10年
スーパーホーネットが半馬身、
グランプリボスでは12年クビ差、14年ハナ差。今回は3頭出しの最も人気薄で悲願を成就させた。
連闘でのGI制覇となったが、道のりは険しかった。2週前の登録段階では補欠の1番手。予定を前倒した安土城Sで2着に敗れ、自力での出走はかなわないはずだった。それが先週水曜に賞金上位馬が回避。「ラッキー。流れはうちにある」と、トレーナーは状態を見極めて出走に踏み切った。
もともと連闘はトレーナーの頭の中にあった。調教だけでは状態を上げきれなかったためで、レースを使って、疲れを取りながらピークに。「連闘したからこそ勝てた。短い間隔で使うことに関しては日本で一番うまい調教師」と自画自賛する。
今後は休養へ。この勝利で8月12日のジャックルマロワ賞、11月3日のBCマイルの優先出走権を獲得したが、「慎重に見極めたい」と矢作調教師。秋は国内戦になる可能性が高いが、12月の
香港マイルについては「目標になってくると思う」と見据える。
GI10勝を含め14戦全勝の“怪物”フランケルの産駒。「もっと大きいところを取らせて、世界的な種牡馬にしたい」。昨年6月10日にデビューして1年未満。成長途上で戴冠を果たした怪物の子には、世界への飛躍が待っている。(千葉智春)
★入場&売り上げアップ
3日の東京競馬場の入場人員は前年比107・1%の6万1215人で、
安田記念の売り上げも同108・5%の188億8899万7300円と、ともにアップした。11レース行われた今年の平地GIのうち、売り上げが前年を上回ったのは
高松宮記念、
桜花賞、
NHKマイルC、
ヴィクトリアマイル、
オークス、
日本ダービーに次ぐ7レース目。