蒼馬久一郎
くりーく
第47回新潟記念(28日、新潟11R、GIII、3歳上オープン国際(特指)、ハンデ、芝・外2000メートル、1着本賞金4300万円、サマー2000シリーズ第5戦 =出走11頭)サマー2000シリーズの優勝は、すでにイタリアンレッドに決定。それでも、この一戦を譲るわけにはいかなかった。5番人気の武豊騎乗ナリタクリスタルが、2番手からゴール前で抜け出し、新潟記念史上初の連覇を決めた。タイム1分59秒1(良)。昨年のサマー2000シリーズ王者が、思い出の新潟で完全復活。秋のさらなる飛躍へ向けて、大きな手応えをつかんだ。 昨年の覇者が意地を見せつけた。武豊騎手に導かれたナリタクリスタルが、堂々たるレースぶりで新潟記念47回の歴史で史上初となる連覇を達成した。 後方から差を詰めただけの前走の小倉記念(6着)とは異なる積極策。先手を奪いかねない勢いだったが、サンライズベガに先手を譲り、2番手で折り合う。人馬の呼吸がピタリと合って、JRA最長の658・7メートルの直線へ。後続の様子をうかがいつつも、気を抜く面のあるクリスタルだけに、ユタカはリード役のベガを最大限に利用。目標を置きながら絶妙のタイミングで追い出すと、ゴール直前でベガをクビ捕らえてV。見事に計算されたユタカならではの頭脳プレーだった。 「着差以上に強かった。完勝でしょう」。ユタカは前週のレパードS(ボレアス)に続き、新潟で重賞連勝。新潟芝では02年スプリンターズS(ビリーヴ)以来の重賞Vで「来週は新潟に来ることができませんが、また来たときは応援お願いします」と笑顔。夏開催の最終週は、小倉2歳Sで有力馬マコトリヴァーサルに騎乗。秋のGIシリーズに向けて、名手の調子が上がってきた。 クリスタルはこれで重賞3勝目だが、5歳夏を迎えてもまだまだやんちゃだ。ソラを使ったり、モノ見は当たり前で、気が乗らないとレースをやめてしまう。今回も芝1800メートルのスタート地点のゲート跡に驚き、レース中にジャンプしたほど。騎乗には細心の注意が必要だが、この日のような正攻法のレースで真面目に走れたことは、今後につながるはずだ。 「裏切られるレースが多い馬だけど、連覇できて本当にうれしい。(武豊騎手が)うまいこと乗ってくれました」と木原一良調教師は破顔一笑。秋はステップレースをひとつはさんで、天皇賞・秋(10月30日、東京、GI、芝2000メートル)が濃厚だ。「コンスタントに力を出せるようになれば、(GIやGIIでも)やれると思う。持っているポテンシャルは高いですから」とユタカも大きな期待を寄せる。実りのある秋へ、ナリタクリスタルの新たな挑戦が始まる。(加藤隆宏)