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【地方交流G1懐古的回顧】2009年全日本2歳優駿 忘れられない濱口騎手の勇姿…笠松の快速娘ラブミーチャン

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【地方交流G1懐古的回顧】2009年全日本2歳優駿 忘れられない濱口騎手の勇姿…笠松の快速娘ラブミーチャン


「中央重賞懐古的回顧」の姉妹版。来たる地方交流G1の過去の優勝馬をピックアップして回顧し、各地の競馬場の舞台で輝いた馬を紹介する「地方交流G1懐古的回顧」。第4回は2009年の全日本2歳優駿優勝馬ラブミーチャンを取り上げる。


現役時には類いまれなる速力を武器に第3回JBCスプリントを制し、種牡馬として地方競馬リーディングサイアーに8度輝いたサウスヴィグラス。主にダート向きのパワフルなスピードと先行力を遺憾なく伝える種牡馬であり、全盛期には地方の短距離戦ではサウスヴィグラス産駒の馬券を買っておけばまず間違いないような絶大な信頼感があった。最初期のスパロービートを皮切りに、ナムラタイタン、コーリンベリー、ヒガシウィルウィンなどの活躍馬を矢継ぎ早に送り出し、その立場を盤石のものとしたが、キャリアの初期に当たるラブミーチャンが果たした役割は非常に大きい。

当初は「コパノハニー」という馬名で栗東の須貝尚介厩舎に所属したものの、腰の甘さから坂路で動かなかったことが一因となり笠松の柳江仁厩舎へ転入したラブミーチャン。言うなれば“リストラからの再出発”だったわけだが、その後の活躍は目覚ましかった。とにかくスタートセンスと先行力、それに持続力が飛び抜けており、ダート短距離での安定感は格別。49歳にして全国区のお手馬に巡り合った濱口楠彦騎手とのコンビもアンバランス且つどこかユーモラスで、私は彼らに首ったけであった。

彼女の生涯唯一のG1タイトル(正確に言うと額面はJpn1になるが)である2009年の川崎・全日本2歳優駿は持ち味の速力を活かして一杯に粘り込むという内容。後々の走りを見る限り、千六どころか千四でも気持ち長いところがあったラブミーチャンには厳しい一戦だったのかも知れない。それだけに2着馬ブンブイチドウをはじめとして、アースサウンドやビッグバン、あるいはマグニフィカにナンテカ、ポシビリテといった全国級の強豪を完封したのは価値があった。

1歳セリにおいて315万円という安値で取引されたラブミーチャンは「二束三文のマイナー血統であった」という文脈で語られることがよくある。彼女の出生時の評判という意味でそれは間違っていないだろうが、後に母の母ラストヒットを祖とする牝系は地方競馬に根を張る名門ファミリーへと成長を遂げている。片や娘の活躍を礎として“地方競馬の巨人”へと上り詰めたサウスヴィグラスが自身に匹敵する後継種牡馬に未だ恵まれていないだけに、「もしラブミーチャンが牡馬だったら」と夢想することもままあるが、それは無意味な仮定でもある。

円熟味を増した6歳秋の引退発表まで、ラブミーチャンは一貫して大スターであり続けた。彼女の後にG1級の活躍を見せた地方所属馬は数多いるが、ほぼ同時期に活躍した3歳年上のフリオーソを含めても“華”という面で彼女に匹敵する馬は恐らく存在しない。そのイメージの形成に大きく寄与した主戦の濱口騎手など、彼女の引退発表後に関係者が相次いで亡くなったのは不幸だったが、ラブミーチャン自身は今も健在。そして彼女の快速ぶりの記憶は笠松重賞・ラブミーチャン記念の名称に今も刻まれている。

ラブミーチャン
牝 栗毛 2007年生
父サウスヴィグラス 母ダッシングハニー 母父アサティス
競走成績:地方31戦17勝 中央3戦1勝
主な勝ち鞍:全日本2歳優駿 東京盃 兵庫ジュニアグランプリ 東京スプリント クラスター

(文・古橋うなぎ)

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